司法書士などの専門職や、普段ご本人と接する機会の少ない方が任意後見人となる場合
⇒任意後見契約+見守り契約を併用する。
ご家族など、身近な方が任意後見人となる場合と違い、ご本人の様子を知る機会が限られるため、適切な時期に任意後見契約をスタートさせることが難しいという問題点があります。
そこで任意後見契約とは別に、ご本人と見守り契約(※)を結んで定期的にご本人と連絡をとりながら、支援開始時期を判断します。
※「見守り契約」
任意後見人が、定期的にご本人の安否や心身の状態、生活の状況を確認して、適切な時期に任意後見監督人の選任を請求することが主な内容です。
必要に応じた法的なアドバイスをする内容も含めることもできます。
ご本人の判断能力はあるけれど、
身体的能力の衰え・病気などにより
銀行等の日常の預貯金取引に不安がある場合
⇒任意後見契約+任意代理契約を併用する。
任意代理契約とは、本人の判断能力がまだあるときから、財産管理などの事務を任せる契約です。任意代理契約を結ぶと、自ら銀行などに出向かなくても預金など財産の管理ができます。
任意後見契約は、判断能力が低下しない限りその効力は生じません。
しかし、判断能力はしっかりしていても、高齢による身体的能力の衰えや病気になどにより、預貯金はあっても、自ら銀行に出向いて手続きすることが難しいこともあります。
このような場合、任意代理契約と任意後見契約の両方を締結しておけば,どちらの事態にも対処できるので安心です。
判断能力が低下した場合には,通常の委任契約に基づく事務処理から,任意後見契約に基づく事務処理へ移行することになります。
注意:任意後見監督人のような監督機能を持たないので、
利用するときは慎重な対応が必要です。
亡くなった後のサポートも委任したい場合
⇒任意後見契約+死後事務委任契約を併用する。
任意後見契約は、ご本人の死亡により、契約は終了します。
死後事務委任契約は、ご本人が亡くなった後の葬儀や埋葬等に関する死後の事務を任せる契約です。
身寄りがない方、親族があっても疎遠で一人暮らしの高齢者など、亡くなった後のことに不安を持たれている方にとって役立ちます。
具体的には
死後の病院への精算
葬儀や納骨また永代供養等に関する事務
賃借不動産の明け渡し
家財道具や生活用品の処分
親族ほか関係者への連絡
行政官庁等への諸届け などを行います。
⇒遺言の利用
死後事務委任契約で委任できるのは、上記の様な事務手続きに限られます。
財産の承継(誰に相続させるか)等の指定は、遺言書の中で指定しなければいけません。
最愛のご家族に無用な争いを起こさせないためにも、
ぜひ遺言を残しておかれることをお勧めします。
*注意*
遺言書の中で、祭祀の主宰者を指定する・遺言執行者に葬儀や法要等に関する
事項を託す・付言で希望を表明する…
などは理論的には可能です。
(ただし、これらは法律上の遺言事項にはあたらないため、葬儀や法要等に関
わる遺言は、遺言者の希望の表明として、遺産の分配等に関する条項に続く付
帯事項としてなされることになります。)
しかし、一般的に遺言書が開示されるのは、
葬儀・納骨等の法事がひと通り落ち着いたらというケースが多いので、
これでは委任者の意図が確実に実現されない可能性が高くなります。
遺言書では対応できない事項を網羅し、
本人の死亡した瞬間から対応できるようにするためには、
死後事務委任契約が必要となります。
・見守り契約
・任意代理契約
・死後事務委任契約
・遺言
を任意後見契約とセットとすることで、
より安心なサポートを期待することができます。
判断能力 十分 ⇒ 不十分 ⇒ 死亡 |
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任意代理契約・ 見守り契約 |
スタート→→→ |
終了 | |
任意後見契約 |
スタート→→→ | 終了 | |
死後事務委任契約 |
スタート→ | ||
遺言 |
スタート→ |
「将来についての漠然とした不安を解消すること」
「自分が亡くなった後のトラブル発生を可能な限り防ぐこと」
それを実現するためには、この4点をセットすることが最善の方法です。
しかし、最初から4点セットで検討するのは、
ハードルが高いと思われるかもしれません。
その場合、一般的には
1.「遺言書」
2.「任意後見契約」と「見守り契約」
3.「死後事務委任契約」
の順で検討される方が多いようです。